P--1423 P--1424 P--1425 #1横川法語    横川法語  まづ三悪道をはなれて人間に生るること、おほきなるよろこびなり。身はい やしくとも畜生におとらんや。家はまづしくとも餓鬼にまさるべし。心におも ふことかなはずとも地獄の苦にくらぶべからず。世の住み憂きはいとふたより なり。このゆゑに人間に生れたることをよろこぶべし。信心あさけれども本願 ふかきゆゑに、たのめばかならず往生す。念仏ものうけれども、となふればさ だめて来迎にあづかる。功徳莫大なるゆゑに、本願にあふことをよろこぶべ し。またいはく、妄念はもとより凡夫の地体なり。妄念のほかに別に心はなき なり。臨終のときまでは一向妄念の凡夫にてあるべきぞとこころえて念仏すれ ば、来迎にあづかりて蓮台に乗ずるときこそ、妄念をひるがへしてさとりの心 とはなれ。妄念のうちより申しいだしたる念仏は、濁りに染まぬ蓮のごとくに て決定往生疑あるべからず。 P--1426